大判例

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福岡高等裁判所 昭和47年(う)149号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕原判決挙示の証拠<略>を総合すれば、被告人ら(被告人両名及び高崎武行ほか二名)が共謀して原判示窃盗の実行中、瀬戸昇及び小林正勝に発見され、逃げおくれた共犯者高崎武行が同人らに捕えられたので、その逮捕を免れさすべく、被告人平安及び同白石において原判示角棒を持つて引返し、右瀬戸及び小林に対し、右角棒を狂暴に振るつて、その頭部又は肩部を目がけて殴りかかり、同人らが手でこれを防いだため、後記の如く小林はその左前腕部に、瀬戸は左手第三、四指に傷害を負つたものであつて、被告人らに傷害の故意を是認するに足る加害意思が十分窺われるのみならず、右角棒による打撃の強さからみても、かなりの打撲と認められ、右被害者らにおいても右殴打を受けたこととこれによる痛みにより同部位に傷害を受けたことを意識するに至つたものである。

しかしてこれらの傷害は、小林正勝において左前腕部と左下腿部にそれぞれ打撲を受け、左前腕部の傷は約一センチメートル平方に表皮が破れて血が惨み出ていたほか、その周辺約四センチメートル平方が皮下出血を伴つて腫れ上つて痛み、二日間通院し、消炎酵素剤や鎮痛剤を用いて治療を受け、左下腿部は湿布しただけで痛みを消失したが、左前腕の出血部位は三日間位で痂皮ができたものの、四、五日間は痛みが持続し、九日位を経ても痛みが残つたことが認みられる。また、右瀬戸昇においては左手第三、四指及び左大腿部に打撲を受け、左第三、四指は擦過状の創傷を形成し、各第二関節附近から僅かながら出血し、左大腿部は直径約二センチメートル位が紫色になつていて、二日間通院し、消炎酵素剤や鎮痛剤による治療による治療を受けたことが認められ、左手第三、四指の傷は四日間位包帯し、曲げると痛みを感じ、痂皮の剥離後化膿したが六日間位で殆ど治癒状態になつたものの、現在でも長さ一センチメートル前後の細い瘢痕二条が残つていることが認められる。なお、当時は小林においては物を持つとき左腕を自然にかばい、瀬戸においても指を曲けると痛み、包帯もしていたので自動車の運転に支障があつたものである。

右に明らかな如く、いずれも生理又は生活的機能に障害があつたことは否定しがたく、日常一般に治療もしないで放置する程度の軽微なものではなく、医師高田千年の供述記載にも現われるとおり治療を必要とするものであつて、現実に医療を受けるに至つたものであり、到底日常生活で一般に看過されるほどの極めて軽微な傷害ということはできない。したがつて、右に反する原判決の認定部分(傷害は外見上発見できない位で、痛みも二三日感じた程度にすぎず、とりわけ瀬戸の場合は一回診療等を受けたのみで自然治癒したものであつて、いずれの傷害も日常生活上一般に看過できる程度のものであつたかの如く認定する部分等)は誤認というべきである。

そうしてみれば、右小林及び瀬戸の各傷害は軽傷とはいえ、日常生活上一般に看過される程度の軽微なものとは言えず、強盗致傷罪を構成する傷害と認めるに足るものといわなければならない。したがつて、原判決の事実認定は相当でない。他面、原判決の説示に依れば、強盗の手段たる暴行の概念を拡大して軽微な傷害をこれに包摂させ、反面、強盗致傷罪における傷害につき特別の傷害概念を設定し、本件傷害はこれに該当しないというのである。しかし、暴行の強弱又は傷害の軽重のほかに、右のように強盗に限り暴行又は傷害の定型(又は類型)そのものを特別に解すべき実定法上の根拠は見出しがたい。尤も、日常生活において一般に看過される程度のきわめて軽微なものであつて、刑法上の傷害とはいえないものもないわけではないので、このようなきわめて軽微な傷害であれば、強盗致傷罪の傷害とするに足りないといえるのであるが、本件傷害はそのような傷害の類型性を欠くほど軽微なものではない。かくして、原判決が強盗致傷罪の成立を否定したことは、事実を誤認し且つ同罪の傷害の解釈適用をも誤つたことに帰因し、これが判決に影響を及ぼすこと明らかであるから破棄を免れない。論旨は理由がある。

(藤田哲夫 平田勝雅 井上武次)

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